愛の手紙は誰の手で

気弱で地味な王太子(※後のルイ16世)は、妻マリ−・アントワネットの相手をほとんどしないで、趣味の錠前造りで火事場に入りびたっていた。

「オスカル…、私には分からないんだ。
あの人が、あんまり綺麗で可愛らしくて…
、その…、どうやって話をしたらいいか…。
あの人は、何をやっても何を言っても、素晴らしいのに…。
本当は、とっても愛しているんだけど…、人には言わないで貰いたいんだ…、こんな事…」

王太子の気持ちなど知らないマリ−・アントワネットは、日々の淋しさと退屈から、オスカルを護衛に附けて、お忍びでパリのオペラ座の仮面舞踏会に出掛けてしまう。



そして、その仮面舞踏会でパリに滞在中のスウェーデン貴公子フェルゼンと運命的な出会いをする…。

「若造、名を名乗れ!身分は?地位は?」

「人に名を尋る時は、そちらから先に名乗るのが礼儀だと思うが?」

「オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ。
近衛隊々長だ」

「私は、ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン。
スウェーデン人だ。身分は伯爵。留学中なので地位はない」

「よし、では、フォン・フェルゼン。
このお方とお話がしたければ、ベルサイユ宮に来て、正式に謁見を申し込まれるがよい。
この、お方は、フランス王太子妃殿下マリーアントワネット妃様だ」

「アントワネット…!、存じ上げずに失礼致しました」

フェルゼンは、膝まつき、アントワネットの右手に接吻をする。

「フェルゼン様ですね…。お名前、覚えておきますわ」

オスカルは、女官長に馬車の用意をさせるとマリーアントワネットと共にベルサイユ宮へと戻って行った。

そして、以降、宮廷では、マリーアントワネットとフェルゼンの二人の噂が囁かれていく…。



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