運命の扉の前で

1789年7月13日の朝が明け始める…。

衛兵隊の寄宿舎では、戦いになったら、その場で衛兵隊を辞めて、革命に身を投じようとB中隊の誰もが思っていた。
そして、オスカル自身も又、自分の思いと考えを隊員達に話をする。

「私は、今この場で諸君の隊長である事を辞める。
何故なら、私の愛する人…、私の信ずる人が諸君と同じように民衆に対し、発砲しないと思うからだ。
私は、その人に従おうと思う。
その人が民衆と共に戦うと言うなら、私は戦う。
諸君…、私はアンドレ・グレンディエの妻となった。
私は、夫の信ずる道を共に歩く妻となりたい」

「おめでとうよ!お二人さん!」

「あっ…、いや…」

アランに祝福を言われたオスカルとアンドレは、照れ臭そうに答えた。

その場に立ち合い、一連の話を聞いていたダグー大佐にオスカルは告げた。

「貴方は貴族だ。私達と行動を共にするとは思えない」

「はっ!ご一緒できません」

「今、ここで聞いた事を連隊本部へ報告なさるも、なさらぬも貴方の自由です」

「はっ!報告するつもりです…。
但、今日一日、私は無断で休暇を取るつもりです。
報告は、明日以降になるでしょう。お身体をくれぐれもお大事に」

「ありがとう…。ダグー大佐」

チュイルリー広場では、民衆はアンバリッドの兵器庫を襲って、2万3千丁の銃を手に入れていた。

そして、1人の兵隊の発砲が引き金となって、遂にフランス大革命の血で血を洗う凄惨な戦いの幕が切って落とされたのである。

「この階級章は、もう要らないな」

オスカルと衛兵隊員達は、ベルナールの助けを得て、民衆に迎え入れられた。
ここでオスカルとロザリーは久しぶりに再会した。

午後に入って、軍隊と民衆との戦闘は至る所で行われて、益々、エスカレートして行った。

そして、連隊本部から出された元衛兵隊員達への討伐命令は、既に全連隊へと行き渡っていた…。

50名いた元衛兵隊員たちは、約半数になっていた…。

そして、一発の銃弾がアンドレの胸を貫いた…!





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