合言葉は“サヨナラ”

重大な軍規違反をしたにも係わらず、マリーアントワネットの温情で処分を免れたオスカルは、ベルサイユに出向いて王妃と謁見すると御礼を述べた。

「当たり前です。私たちは20年も前からのお友達です。
こんな世の中です。お互い嫌な思いをしますね。
でも、もうすぐ、この騒ぎは治まります。
今、フランス全土から、バリとベルサイユを目指して、王家の軍隊がぞくぞくと進軍して来ています。
一同に集まれば、10万は越えるでしょう。
フランス国の王女として私が命令しました。
国民議会を解散させ、民衆の暴動に備える為です。
ルイ王朝は、不滅です。こんな事で揺るぎはしない…。
やがて、衛兵隊にも出動命令が出るでしょう。
やも得ない場合、王家は暴徒たちとの戦闘をも覚悟しております。
その時は、オスカル、あなたを頼りにしています」

衛兵隊の兵舎に戻ったオスカルは、吐血をして胸の疾だと気が付く。

7月に入り、次々に王家の軍隊がパリに到着する。
ロワイヤル・クラバ−トル連隊は、ビクトワ−ル広場を閉鎖して事実上、広場における民衆の集会を禁止した。

一方、ロワイヤル・アルマン連隊は、パリからベルサイユへ通じる道を完全に封鎖。
ルイ16世の退位を要求するデモ隊と小競り合いを演じ、サギス・サマ−ド連隊は独自にパリを巡回して、夜の外出や集会を厳しく取り締まろうとした。

こうして、1789年の状況は7月に入って一挙に険悪化した。
街の至る所に銃を持った兵が立ち並び市民を威圧した。
そして、もう1つ重大な問題が起こった。
10万を越す軍隊がパリに集まった事から、パリ及びその周辺は人口増加による極端な食糧不足に陥った。
憎悪と飢餓が人々の顔から、完全に笑顔を奪い取った。

ベルサイユ宮では、大蔵大臣ジャック・ネッケルが国王に進言する。

「国民議会を弾圧するよりも、これを承認し、話し合う妥協策をお取り下さい。
財政危機を乗り越える為の王政改革を行わなければ成りません。
もはや、王家だけによるフランス国の運営は不可能です。
新しい政治力、そして、勢力(平民)との協力に基づく議会政治なくして、国家の繁栄は有り得なません!」

このネッケルの進言に迷う国王ルイ16世に対して、王妃マリーアントワネットは激怒する。

「王政改革など許せません!
国王の承認を受けない議決は、全て無効とする声明をお出しになっているでは、ありませんか!
今更、国民議会を認めたなら、王室の権威はどうなるのです!
国王の尊厳に傷が付きます!、負けては成りません。
時の流れなど、王が作るものです!」

マリーアントワネットは、ネッケルに対して財政担当閣僚で有りながら任を全うせず、国王の政策に泥を塗る言動をした事は屈辱的で許せず、ベルサイユの施行を禁じて罷免した。

そんな、ネッケルの罷免を聞いたロベスピエールは、市民に演説する。

「国王は、遂に愛国者に対する弾圧を始めた。
ネッケル氏を手始めにやがて大量の虐殺が始まるだろう。
今こそ、我々は武器を持って戦おう!立ち上がる時が来た!
私の腕はたった2本だ!
だが祖国を思う情熱と勇気はベルサイユ宮を焼き尽くす程、燃え盛っている!
諸君!腕を組もうじゃないか!共に戦おう!」

武器を取って、立ち上がり始める市民たち。

ロベスピエ−ルの演説を聞いていた、過激でテロ行為に走りがちなサン・ジェストをベルナールがいさめる。

「知っているかい?、君はロベスピエールの本当の目的を…。
革命だよ。国民主権の平等な国家を作る為だ。
ロベスピエールの本当の狙いは権力さ!
民衆を押し立てて、そのトップの座に座る…。
何が革命だ!民衆の為だ!
見ていてごらん…、ベルナール。
先生はね、 話し合いだの議会だの言っているけどね、本当はチャンスを狙っているのさ!
正当な理屈をつけて、今の特権階級を皆殺しにする為のね。
そういう意味で言えば、先生は僕なんか比べ物にならない位のスケールを持ったテロリストさ…!」

ベルナールは、ロベス・ピエ−ル演説を聞き思う。

「いや、サン・ジェスト…。
例え、ロベスピエールが、どんな男でも、そんな事は問題じゃない…。
要は、民衆が自分達の為に立ち上がれるか、どうかなんだよ」

パリ市内を巡回していたオスカルは、アランに問いた。

「このままいったら、パリ、人々はどうなる?」

「さあ…、行くとこまで行くしかねえんじゃないですか…」

「暴動…、という事か…」

「革命って言って欲しいね」

「革命…!?、革命か…」

「革命になったら、勝つのは民衆ですよ」

後日、オスカルは、今まで断り続けていた肖像画を自ら画家に依頼して、描き始めた。
その画家は、20年前にマリ−アントワネットの輿入れを見ていた画家であった。

「相当、お悪いようだ…。完成を急がねばならんな…」

画家は、オスカルの病気を見抜いていた…。

後日、ベルサイユに出向いたオスカルは、膝まつきマリーアントワネットに進言する。

「何とぞ、軍隊にパリ市内より撤退命令をお出し下さい。
どうあろうと、王室と国民とが殺し合うような事になっては、成りません」

「もし、そうなったならば、オスカル、あなた私を守ってくれますね?」

「私は…、もはや近衛を辞めた身でございます」

二人の間に長い沈黙の時間が流れ、お互いに見つめ合いながら涙を流す…。

「軍をお引き下さい。
王后陛下、王室、御自分の国の民に銃を向けては、成りません」

「出来ません…、オスカル…」

オスカルは、黙ったまま立ち上がると背を向けて去ろうとした。

「オスカル…!何故…、涙を…?
まるで、これっきり会えないみたい…。
オ−ル・ルボワ−ル(※また会いましょう)…」

「オ−ル・ルボワ−ル…」



オスカルは、背を向けたまま、独り言のように呟いた。

しかし、これが永遠の別れで有る事は、アントワネットもオスカルも分かり過ぎる程、分かっていた。
一国の女王という壁は、温め合った友情ですら、遂に越える事が出来なかった…。



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