嵐のプレリュード

衛兵隊員の寄宿舎に衛兵隊部長アランの妹ディアンヌが訪ねて来た。

「兄さん|、私…結婚します」

妹ディアンヌの結婚報告にアランは喜んだ。

「じゃあね!兄さん!」

帰り際にディアンヌは、オスカルに出会った。

「いつも、兄がお世話になっています」

「いえ、こちらこそ」

「兄が申しておりました。
オスカルとは、ヘブライ語で神と剣を意味するんですって。
神と剣…、そして素敵なブロンドの髪…。
まるでフレスコ画に描かれた神々のよう…」

キラキラと瞳を輝かせて、微笑んだディアンヌは、オスカルに挨拶をして帰って行った。

その一方で、投獄されていた衛兵隊員のラサールが帰って来た。
オスカルがブイエ将軍を通じて、憲兵隊に釈放を頼んでいたのだった。

「これで、大っぴらに銃が売れる!
もし、俺が捕まった時も頼むぜ!」

アランは、オスカルに冗談めいて、毒舌を言ってみせた。

オスカルはアンドレを伴って、オペラ座にいるブイエ将軍にラサールの件での御礼を言う為に貴族の馬車で出掛けた。
しかし、街では貴族と分かれば襲撃しょうとする民衆たちが沢山あふれていた…。
それらは、革命の嵐の前の出来事だった。


オペラ座に向かうジャルジェ家の青獅子の紋章馬車を見て、貴族と悟った民衆たちは、怒りながら、馬車を囲み始めた。
そして、転倒した馬車からオスカルとアンドレの2人が引きずり出された。
そして、一斉に襲撃される…。

「止めろ!アンドレは、貴族ではない!!」

2人は引き離されて、オスカルは路地裏に逃げ込んだ。
ブイエ将軍の護衛をしていたフェルゼンが暴動と知って、オスカルの救援にやって来た。

「アンドレは、何処だ!!私のアンドレが危ないんだ!!」

必死にアンドレの安否を心配するオスカルにフェルゼンは答えた。

「私のアンドレ…か。よしっ!判った!
君のアンドレは、私が必ず助けて来る!」

フェルゼンは、民衆の気を自分の方に向ける為に発砲する。

「暴民ども良く聞け!、私の名は、ハンスアクセル・フォン・フェルゼンだっ!」

発砲後の静寂の中で民衆たちが呟いた。

「…フェルゼン…?王妃の愛人だ!!、あいつから先にやっちまえ!」

民衆たちは、一斉に馬に乗ったフェルゼンを追い掛け始めた。

オスカルとアンドレは、フェルゼンの救援で負傷しながらも助かった。


衛兵隊部長のアランが妹ディアンヌの結婚式の為に休暇を取っていた。
しかし、休暇期日を過ぎてもアランが寄宿舎に姿を現さない事から、オスカルとアンドレは、アランの様子を見に実家に行く。

家周辺には、異臭が漂い、実家の扉を開けるとアランの母が泣いていた。
そして、ベッドで眠るディアンヌを憔悴しきったアランが抜け殻のようにディアンヌを見つめていた。

ディアンヌは、結婚相手の貴族に裏切られて、首を吊っていたのだった…。

ディアンヌの死でオスカルは、ふと予感した。
愛する者、美しい者、生きねばならぬ者が、ある日、突然、帰らぬ人となる…。
ひょっとして、新しい時代とは…、そんな哀しい時代ではないんだろうかと…。



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