アメリカ独立戦争が終わってから、2年の月日が流れていた。 「渡り鳥だ…、帰って行くんだな。南へ…。 奴らは、どんなに自由に大空を飛ぼうと、結局は、帰って行くんだ…。決まった所へ。 誰にも止められはしない。誰にも…。 お−い!オスカル!林檎をかじるか?」 「頂こう!アンドレ」 アンドレがオスカルに向かって林檎を放り投げた。 そして、オスカルがアンドレからの林檎を受け取ろうとした時、空中に放り出された林檎が銃声と共に砕け散った。 その光景にオスカルとアンドレは呆然となった。 「フェルゼン…!!」 二人の前で林檎を撃ち抜いたのは、アメリカから帰還したフェルゼンだった。 その後、フェルゼンはオスカルの屋敷で夕食を共にする。 「帰って来たんだな…フランスへ」 「お会いせずにスウェーデンへ帰るつもりだ。 7年前に私は逃げた…。アントワネット様から…。。 卑怯にも一方的に…、そして終わったんだ…。 終わって、良かった恋だった…」 マリ−・アントワネットに会わずに、帰国しょうとするフェルゼンの言葉にオスカルの女心が揺れ動いた…。 《フェルゼンの心に、もうアントワネット様はいない…? 本当だろうか…?そんな事…、でも…、もし…、もし、それが本当なら、今ここに居るフェルゼンは、私がこの世でたった1人、愛しても良いと思った人…。 ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン…》 夜、パリの下町では、吟遊詩人が呟いて市民達が集会をしていた…。 《貴族の時代は、もうすぐ終わり…。 王室が俺たちフランスの全てだとも、もう思わない…。 俺達が不味い物を喰うなら、王妃達も不味い物を食え! 俺達の税金で美味い物を食いやがって! 奴等が喰うなら俺達も食おう! 昨日、グラヴィリエ街で子供が死んだ。 パンが買えずに子供が死んだ…。 一昨日、タンプルでは、女が死んだ。 子供に乳をやろうとして働き過ぎて、女が死んだ…。 死ね!太ったブタは、みんな死ね…!》 この光景を馬上から見ていたフェルゼン、オスカル、アンドレらは、静かに立ち去っていく。 そして、路地裏の壁には、ナイフの刺さった王妃のビラが貼られてあった。 そのビラを見て、フェルゼンは、7年の間にフランス国内が揺れ動き始めいる事と、国民の気持ちが王室から離れている事を知った。 「オスカル…、やはり、私はベルサイユに行こうと思う。 今や王室は危機を迎えようとしている。 こんな時に私に出来る事と言えば…、忘れようとしても忘れられない愛する人の為に出来る事と言えば、側にいて差し上げる事くらいしかない…。 誰に何と言われようと、愛する人の不幸を私は黙って、見てはいられない」 フェルゼンは、宮廷を離れて小トリアノン離宮で過ごしているマリ−・アントワネットと謁見した。 「新しく起こる物の力には、燃え上がる火に似勢いがあります。 このフランスでも小さな火が燃え始めています。 その火の粉が王室に振り掛かる前に消し止めねば成りません。 もし、お許しが頂けますなら、これからの半生、アントワネット様の側でお仕えする覚悟でございます。 私は7年の時を経て知りました。 激しく心を燃やす事の愚かさを…。 そして、その危険を…、もはや激しくは燃やしませぬ…。 その代わり、静かにセーヌの流れの如く、永遠に貴女への想いをこの胸に燈し続けるつもりでおります。 王后陛下、このフェルゼン、忠実な家臣として、申し上げなくては成らない事がございます。 この離宮を出て、王宮へお戻り下さい。 陛下が此処にお移りなさった為に多くの貴族達が王室より、心離れて行ったと聞き及びます。 速やかにベルサイユにお戻りになり、貴族達を呼び戻すのです。 今はせめて、貴族達だけでも、お味方に付けて措かねば成りません。 そして、ポリニャック夫人やそのお仲間とも手をお切り下さい。 一国の王妃がお取り巻きの意見を重要視され、お取り上げなさる事は、国の為は勿論、王宮の中でも波風の元と成ります。 その代わり、このハンス・アクセル・フォン・フェルゼン…、故国スウェーデンを捨てます。 王妃様のおんため…、このフランスに我が身、全てをお捧げ致します」 王妃は、素直にフェルゼンの進言を受け入れ、離宮を去る。 そして、ベルサイユに戻って謁見や公務を再開する。 そして、フェルゼンは正式に陸軍連隊就き大佐となって、毎日、ベルサイユに守行する。 オスカルは、馬を走らせながらフェルゼンに思いを馳せていた。 『フェルゼン…、貴方は誰よりも貴方を必要とし、誰よりも貴方を愛する人の元に戻って行った…。 7年の空白を越え、7年の苦しみを経て、尚、貴方は戻って行った…。 素晴らしい事だとオスカルは思います。 貴方を心から初めて1人の女として…』 そして、オスカルは、決意を固めた。 夜、王宮で開かれた舞踏会に出席していた貴族達が騒然とする。 ギリシャ神話の女神の彫刻から抜け出て来たような、名の知れない高貴な貴婦人の余りの美しい姿に目を奪われていた。 「1曲、お相手を…」 フェルゼンは、名の知らぬ美しい、その貴婦人にダンスを申し込んで踊り出す。 「私の親しい友人に貴女と似た方がおります。もしや…、貴女は…?」 フェルゼンは、その美しい貴婦人の腰に手を回して、引き寄せようとした時、フェルゼンと目が合った貴婦人は慌てて、身を離して去って行った。 「フェルゼンの腕が私を抱いた…。 フェルゼンの瞳が私を包み…、その唇が私を語った…。 諦められる…、これで、これで私は諦められる…」 オスカルは、フェルゼンへの思いを絶ち切ろうとしていた…。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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