首飾りは不吉な輝き

ベルサイユ宮に御用達係の宝石商ベメールが、王妃マリ−・アントワネットに豪華な首飾りを見せにやって来た。

この首飾りは、前国王ルイ15世がデュ・バリー夫人に贈る為に作った品で160万リーブル(※現在のお金で192億円)という莫大な首飾りであった。

マリ−・アントワネットは、敵対していたデュ・バリー夫人の為の品でもあり、首飾りが高額な品である事から、アッサリと買う意思がない事をベメールに伝えた。

しかし、この首飾りが後にマリ−・アントワネットを思いもよらぬ事件へと突き落とす事になる…。

「実は今日、大胆不敵にも、わたくしのお腹を足で蹴飛ばした家臣の事で、陛下に苦情を申し上げに参りました」

マリ−・アントワネットからの報告を受けて、夫の国王ルイ16世は驚愕した。
しかし、それが待望の懐妊報告であった事に気付いて喜んだ。

そして、第1王女マリー・テレーズと第1王子ルイ・ジョゼフを授かった。

マリ−・アントワネットは、子供と過ごす時間を大切にしたい事から、ベルサイユ宮の広大な庭園の一角に作られた小さな小離宮プチ・トリアノンへと移住した。
この事で、事実上、マリ−・アントワネットの公式謁見は取りやめになった。

そして、民衆だけでなく、貴族の中にさえ王室に反感を抱く者が増え始めていた。

一方、偉大なるオーストリア女帝マリア・テレジアは、娘マリ−・アントワネットの身を案じながら、63歳の生涯を閉じた。

「メルシー伯爵…、おかしいですね…。
書いている文字がハッキリと見えないのですよ…」

マリ−・アントワネットは、母国オーストリアへ涙を溢れさせながら手紙を書き綴っていた。

宝石商ベメールは、『王妃マリ−・アントワネット様に口添えして欲しい』と、例の首飾りをジャンヌの元へ持ち込んだ。
そしてジャンヌは、巧みな言葉でローアンを保証人に仕立て上げて、高価な首飾りを手中に収めた。
そして、直ぐに首飾りをバラバラに解体して、恋人ニコラスに海外に行かせ宝石を売りさばいて、金貨に替えさせた。

また、偽造手紙を書かせた司法書士のレトーをスイスに逃亡させて、証拠を残さないように段取りをしていた…。




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